テルモ株式会社/神田 怜美さん

018

エンジニア

ものづくりを誰かのために
医療分野で製品の品質を守り続ける

テルモ株式会社

甲府東工場 設備技術部 設備技術課

神田 怜美

理工学部(旧:工学部/知識工学部) 医用工学科 卒業

テルモ株式会社の甲府東工場で、医療機器を製造するための設備や検査機の設計・開発に携わる神田怜美さん。
キャリアの根底にあるのは、幼い頃から抱き続けてきた「何かを形にする楽しさ」と、身近な人の姿から感じてきた「誰かのために」という想いです。
神田さんがどのようにして今の道を選び、大学での学びをどう活かしているのか、お話を伺いました。

建築への憧れから、
命を支える「医療×ものづくり」の道へ

私の「ものづくり」の原点は、幼少期の習い事や遊びにまでさかのぼります。ピアノや書道、絵を描くことなど、自分の内側にあるものを形にして外に表現することをずっと続けてきて「面白い」「楽しい」と感じてきました。高校生の頃、その情熱は「大きなものを作り、形として後世に残したい」という建築学科への憧れへとつながります。しかし、受験は思い通りには進まず、挫折を味わう中で「自分の本当にやりたいこと、そして長く続けられることは何だろう」と考えるようになりました。

そこで「ものづくり」という軸は保ちながら、大きなものを作って残すよりも「誰かのためにものづくりをする」という方向性へと気持ちが変わっていったのです。当時、身近な人が病気で亡くなったり、友人が難病と闘っていたりした経験から、医療分野であれば自分のものづくりへの情熱を誰かのために活かしながら、長く続けていけるのではないかと考えました。そうして見つけたのが、東京都市大学の医用工学科です。医療と工学が交差するこの環境なら、私の夢を新しい形で実現できると考え、進学を決めました。

学生時代の神田さん

ロボットコンテストで気づいた、
原点に立ち返る大切さ

大学生活で最も鮮烈に印象に残っているのは、医用工学科らしい実践的な授業で行われたロボットコンテストです。患者さんに見立てた小さな人形を、障害物を乗り越えて指定の場所まで届ける自律型ロボットを開発し、そのタイムを競うという内容でした。プログラミング学習用キットが支給され、ロボットの組み立てからプログラムの構築まで、0から1を生み出す工程に何時間も没頭しました。

しかし途中でプログラムの構築に行き詰まり、ロボットがどうしてもゴールにたどり着かない事態が発生します。トライアンドエラーを繰り返しても出口が見えないなか、「一度プログラムの勉強をし直そう」という声がチーム内で上がりました。私は「とりあえずやってみよう」と前に進む意識が強かったため、はじめは勉強に戻ることに抵抗感がありました。しかし、基本から理解し直し、納得した上でコードを書き直した結果、スムーズにロボットが動いたのです。行き詰まったときにずるずると進むのではなく、勇気を持って原点に立ち返ることの大切さに気付いた経験でした。この学びは、複雑なシステムを扱う今の仕事においても私の大切な指針となっています。

「0から1」のその先へ、
多くの人に製品を届けるための技術

就職活動を始めた当初、私は漠然と「製品開発」の道を考えていました。しかし、大学3年生のときに参加したテルモのインターンシップで「生産技術」という分野に出会い、視野が広がりました。大学での学びや開発の仕事が「0から1」を生み出す側面を持つとすれば、生産技術はその1をいかに安定して届けていくかを担う技術だと思いました。

どんなに素晴らしい医療製品があっても、それを安定した品質で量産できる状態にまで形にする技術がなければ、医療は成り立たないと考えます。他社の開発職のインターンも経験しましたが、テルモで触れた「製品を安定して生み出すための仕組みをつくる」という視点は、私にとって非常に新鮮で、大きな社会的意義を感じるものでした。「ここだ、これが私のやりたいことだ」と直感的にピンときたのを覚えています。医療機器という、一つひとつの品質が命に直結する製品を、いかに正確に、そして安定して形にするか。その役割に強く惹かれ、生産技術のエンジニアとしてのキャリアを歩み始めました。

自らの設計で
医療製品の品質を支えていく

現在は、生産ラインにおける検査機の設計・開発を主に担当しています。生産工程を流れる製品が「良品」なのか、あるいは「不良品」なのか。それを瞬時に、かつ正確に判別するためのソフトウェアを設計し、どのような検査機を導入すべきかを検討するのが私の役割です。また、装置そのものをコントロールする制御ソフトの設計も行っています。「この部品をここから取り、こちらへ動かす」「このボタンが押されたら安全のために停止する」と言った、人の操作や判断を機械の動きへと翻訳する作業です。

仕事では、机の上で悩みすぎるよりも「まずは実際に動かして見てみる」ことを大切にしています。大学時代の実験でもそうでしたが、理論上は正しいように見えても、現場では予想外の挙動をすることが多々あります。ある程度の目途が立ったら実機を動かし、その結果をもとに「次はこうしてみませんか」と具体的な改善を重ねていく。自分の書いたコード一行、設計した回路一つが製品の品質を支え、ひいては患者さんの安全を守っているのだという緊張感をもって、日々装置と向き合っています。

装置が動く達成感と、
現場から届く「ありがとう」

設計した装置が自分の思い通りに動いた瞬間には、達成感を覚えます。大学生の頃はプログラミングに苦手意識を持っていた時期もありましたが、今では自分の設計通りに装置が動く様子を見ると「次もやりたいです」と先輩に自ら志願するほど、面白さを感じています。

そして何よりの原動力は、「現場の声」です。生産現場で働くアソシエイトから「この作業で困っている」「ここを改善してほしい」といった相談を受け、知恵を絞って装置を改良します。先日現場から相談を受けて対応をした際に、現場の方から「ありがとう、おかげで不良品が減ったよ」と声をかけてもらいました。自分の技術が目の前の仲間の助けになり、それが巡り巡って、より多くの良質な製品を患者さんのもとへ届けることにつながっている。そう実感できたとき、この仕事を選んで本当によかったと思います。

「やりたいか」と「続けられるか」
という視点

この仕事をする上では、大学で学ぶ知識ももちろん大切ですが、それとともに重要なのは「ものづくりを楽しいと思える心」や「新しいことを学ぶことへの抵抗感のなさ」が大切だと感じています。専門的なスキルは、社会に出てから仕事を通していくらでも身に着けることができます。私自身も、仕事を通して覚えたことが多くあります。だからこそ、自分が「楽しい」と感じる気持ちを大切にしてほしいと思います。

進路に迷ったときは、「何をやりたいか」だけでなく「何なら自分は続けられるか」という視点も持ってみてください。熱い思いがあるから、面白いから、誰かのためになりたいから。続けられる理由は人それぞれだと思います。自分が長く続けていける何かを見つけることができれば、学生生活よりもはるかに長い社会人としての時間が充実すると思います。そして、もし選択を後悔することがあったとしても、その選択を「これでよかった」と正解にしていけるかどうかは、これからの自分次第です。過去を振り返りすぎず、未来に目を向けて一歩ずつ進んでいってください。