東京都市大学/佐藤 圭浩さん

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教員・研究職

「データ」の先にある価値を社会へ
行動力で拓いた学びとキャリア

東京都市大学

デザイン・データ科学部 デザイン・データ科学科
准教授

佐藤 圭浩

情報工学部(旧:知識工学部) 情報科学科 卒業

大学院総合理工学研究科 情報専攻 博士前期課程・博士後期課程 修了
(旧:工学研究科 システム情報工学専攻)

東京都市大学のデザイン・データ科学部で教壇に立ち、AIや画像解析の最先端研究を推進する准教授の佐藤圭浩先生。
高校時代に培った資格や技術を武器に同大学へ進学し、企業との共同研究や刺激的な海外留学を通じて自身の視野を大きく広げました。
民間企業の内定辞退を経て大学院・博士課程へと突き進んだ理由と、現在の仕事に対する情熱についてお話を伺いました。

ITへの好奇心や高校時代の強みを
活かした大学選び

私のコンピューターとの出会いは中学生時代に遡ります。当時は自宅にあったパソコンを勝手に触っては壊し、改造させるスクラップアンドビルドを繰り返しながら、独学でプログラミングの基礎を学んでいました。何か課題や不便なことを自分の手で便利にしたいという思いが、技術に向かう原点だったと感じています。

進学した神奈川県の平塚学園高等学校では普通科に在籍しながら情報処理部に所属しました。部活動ではIT関連の資格取得、映像作品の制作、プログラミングコンテストへの挑戦などに取り組み、国家試験である基本情報技術者試験や応用情報技術者試験を取得しました。普通科高校でありながら専門的な知識や実績を身につけられたことは、自分自身の大きな強みになると考えていました。

大学選びにあたっては、当初は兄が通っていた通学圏内の大学を検討していました。しかし、高校の担任教員との進路面談において、より高いレベルを目指すようアドバイスを受けたことが転機となりました。自身が培ってきた情報分野の知識や実績を最大限に評価してもらえる入試方式を探した結果、AO入試(現在の総合型選抜)が利用できる東京都市大学(当時の知識工学部情報科学科)を見つけ、受験を決めました。オープンキャンパスに参加する機会はなく、受験当日に初めてキャンパスに足を運ぶ形となりましたが、自身の強みを活かせる最適な環境を選択できたと考えています。

体系的な技術修得と
視野を広げた中国留学

東京都市大学に入学してまず実感したのは、独学や高校での資格試験対策で得た基礎知識が、大学の講義内容としっかり合致していたことです。これによりスムーズに講義内容を理解することができました。その上で、単なる知識の暗記にとどまらず、アルゴリズムとデータ構造、ハードウェア記述言語、多種多様なプログラミング言語の特性や得意・不得意に応じた最適な開発手法などを体系的に学びました。独学の域を超えて1段階上のスキルへと確実にステップアップできたことが、学部前半での大きな収穫でした。

学部時代の学びにおいて最も大きな転機となったのが、学部3年の終盤から4年の初頭にかけて経験した中国・大連交通大学への留学です。東京都市大学では、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の支援する「さくらサイエンスプラン」等のプログラムが採択されており、中国から1週間程度留学に来日する学生との交流がありました。一方で、日本人学生の中国への派遣実績が少なく、留学希望者を募っていたため、自ら志願して参加が決まりました。

現地ではIT系の専門講義を受講する一方、日本語専攻の学部において日本人ネイティブとして日本語授業のアシスタントを務め、教壇に立って指導したりグループワークの講評を行ったりしました。また、現地のIT講義はすべて英語で実施されており、IBMの元社員が教員として登壇するなど、産業現場のリアルな技術に触れる機会に恵まれました。専門用語や基礎概念を事前に理解していたため、語学力を補いながら円滑にコミュニケーションを図り、知識を吸収することができました。さらに、現地学生の全寮制生活や学業と課外活動のメリハリといった異なる文化・生活様式に触れたことで、多様な価値観や多角的な視点を獲得するという、大学生活における一番の学びを得ることができました。

学生時代の佐藤先生。研究室にて。

社会実装を見据えた研究を経て
大学院・博士課程へ

学部4年からは包(バオ)教授の研究室に所属し、卒業研究に取り組みました。この研究室は社会実装に力点を置いており、学生が企業との共同研究を担当する環境でした。企業との進捗報告を行い、現場の視察や展示会でのブース運営を手伝うなど、一般的な卒業研究の枠組みを超えた実務的な経験を重ねました。

具体的な研究としては、画像処理技術を用いた形状の定量評価手法の開発に着手しました。画像上の複雑な形態情報を数値化し、顕微鏡画像や構造画像の客観的な比較・解析を可能にする技術です。これは、人間が目で見て識別している能力をコンピューターに付与するという目的意識に基づいています。あわせて、顔認証技術の研究や、メガネを着用せずに奥行き感・立体感を提示できる裸眼式3Dディスプレイ技術の研究にも従事しました。将来的に街中の2D広告表示を裸眼3D化し、景観や情報の伝達手法を一変させるような実用性の高い技術領域です。

将来の進路については、学部3年時には民間企業への就職を想定しており、長期インターンシップへの参加やインフラエンジニアを目指した就職活動を行っていました。自社でデータセンターやサーバー群を保有して運用していたYahoo! JAPAN(現LINEヤフー)を受験し、選考を経る中で高い評価を受けて内定を獲得しました。技術的なバックグラウンドに加え、論理的な思考力や能動的なコミュニケーション能力が評価された結果でした。

しかし、中国留学を終えて帰国した直後、自身の価値観や視野が大きく広がっていることに気づきました。大学での学びや研究活動の可能性をさらに追及したいという思いが強まり、内定辞退を決断しました。内部推薦による大学院入試の締め切り直前に指導教員と相談を行い、大学院修士課程へと進学しました。

修士課程進学後は、画像処理や3Dディスプレイに加え、企業との共同研究や国際学会での発表、論文執筆などの研究活動に過密なスケジュールで没頭しました。研究実績を積む中で指導教員からも博士課程進学を前提として認識されるようになり、私自身も研究に対する熱量と楽観的な見通しを持っていたため、そのまま博士後期課程へと進学しました。

多角的な大学教員としての業務と
学びの生かし方

博士後期課程の在学中、東京都市大学において新たに「デザイン・データ科学部」を設立する構想が進んでいました。学部新設のタイミングと自身の修了時期に1年間のタイムラグが生じることとなったため、修了後は、国立の外部研究機関である産業技術総合研究所(産総研)等でポストドクター(ポスドク)として1年間勤務し、予定通り1年後に東京都市大学デザイン・データ科学部デザイン・データ科学科の講師として着任し、のち准教授に昇格いたしました。

大学教員の業務内容は多岐にわたり、極めてマルチタスクです。講義やゼミナール、学生の研究指導はもちろんのこと、民間企業との共同研究の実施、外部研究資金や助成金の獲得に向けた申請書の作成、図書館運営や防災委員会をはじめとする各種学内運営業務をこなしています。さらに、学部や学科の魅力を社会へ発信するため、小中学生向けの夏休み科学体験教室や学園祭での研究室展示や高校への出張授業なども企画・実施しています。

こうした多角的な業務において、大学時代に培った学びや経験が直接的に生きています。まず研究面では、恩師のもとで叩き込まれた「社会実装」の視点を維持し、時代のニーズであるAIを活用した画像解析モデルの開発など、企業の課題解決に直結する研究を展開しています。また教育面では、学生時代に経験したティーチングアシスタント(TA)や留学先での日本語授業アシスタントの経験から、人に教えるアプローチや教育の体験設計への興味が芽生えており、それが現在の講義構築の土台となっています。大学が実施している「相互授業参観」の制度などを積極的に活用し、他の優秀な教員の講義手法を取り入れながら、常に指導方法の改善を図っています。

研究が形になるやりがいと
採点の厳しさ

大学教員として働く中で直面する大きな苦労の一つが、定期的な採点業務です。講義内容の理解度を精緻に確認するため、学生に対してレポート提出を課していますが、A4数ページで1学年約100名分の提出物を限られた期間内に評価する必要があります。文章表現の客観性や評価基準の明確化を保ちながら大量のレポートを公平に採点することは、精神的にもエネルギーを要する作業です。

一方で、業務における最大のやりがいは、研究成果が学術論文として結実し、公の形として世に残ることです。自分自身や指導している学生の名前が著書や論文としてWeb上のデータベース等に掲載され、世界中の研究者や利用者に読まれる存在になることは、それまでの努力が客観的に認められた証であり、何物にも代えがたい達成感をもたらしてくれます。

主軸の専門性と広い視野を持って
挑戦し続ける未来へ

これから大学選びを行う高校生や、将来の進路を模索している大学生の皆さんへお伝えしたいのは、自らの主軸となる専門性を突き詰めると同時に、多様な分野へ視野を広げる柔軟性を持ってほしいということです。大学教員や研究者に限らず、現代社会で活躍するためには多角的な視点が不可欠です。私自身も情報学や画像処理を軸としながら、医学、地震学、ユーザーエクスペリエンス(UX)といった異分野へ知見を広げることで、研究の領域を拡張させています。

そして何より、「恐れずに何でもチャレンジすること」を大切にしてください。語学力に不安があっても海外留学へ飛び込んだり、獲得した内定を辞退して研究の道へ進んだりと、選択の場面では勇気が求められます。しかし、「失敗しても代替案を考えて対応すればやり直しは効く」という冷静な思考と前向きな姿勢があれば、過度に失敗を恐れる必要はありません。自分のやりたいことや興味の原点を信じて突き進んでいけば、最終的には自分にとって最も納得のいく場所へと到達できるはずです。